張明澄記念館 「張明澄 風水の世界」 を読む その14

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「象数易」の「円図・方図」は、現代に続く風水の系譜のなかでは主流となっている「元合派」、つまり「三元派」や「三合派」と呼ばれるグループの理論的な拠り所となっており、「元合派」の「理気」は、「円図・方図」の六十四卦なしには、全く成り立ちません。つまり「元合派」の成立は宋の「象数易」以後であることは明らかと言えます。 このことは、「五術」のなかでも成立年代が古いとされる「三式」、即ち「太乙神数」、「奇門遁甲」、「六壬神課」などは、「巒頭」はもちろん「理気」においても「円図・方図」を根拠とはしないことから、宋の「象数易」以前からの風水理論であることが窺い知れます。 また「元合派」には「五術」と言えるような機能も揃っていませんから、「五術六大課」の門派である「明澄透派」とは、人脈的にも全く別の系列であったと考えることができます。 宋の「理学」以前は、風水を観察する者にとって、「気」を読むこと、つまり経験則だけが頼りであり、「三式」などの理論も、もっぱら「記号類型」という経験則であり、「理」と言えるような根拠はありませんでした。
「理学」でいう「理」とは、「論理」というよりは「倫理」であり、「気」という、経験則による記述と「理」という規範の間で、黄渠学の「気即理」、朱子学の「性即理」、陽明学の「心即理」などの立場が生まれました。

現代でも、「風水」「占い」「超能力」などの信奉者が「非科学的」などといって軽蔑されることに耐えられず、「疑似科学」と言われるような分野に根拠を見出するように、当時の風水師たちが「理気」という言葉に惹かれたのも無理からぬことでしょう。
風水には「巒頭派」と呼ばれる系列と「理気派」と呼ばれる系列とがあり、「巒頭派」によれば、「巒頭」の作用は80%、「理気」の作用は20%に過ぎないとします。「理気派」によっても、「巒頭」の作用は60%、「理気」の作用は40%としており、いずれにしろ、「巒頭」が優先されることは間違いありません。 時間や方位など、あらゆる物事に「易卦」や「干支」という「記号」をつけて「分類」した上で、共通するものから規則性を見出し、次に来るものを予知する、という中国式「記号類型学」の手法は、「格物致知」 という、二千五百年来中国の学問を支え続けた理念に合致するものでした。 西洋科学には、時間に記号をつけるという発想はないし、今までに、百年もかけて実験してみるような科学者もいませんから、「記号類型学」に関する限りは、否定も肯定もできないし、「非科学」とは言えても「反科学」とは言えないはずです。 つまり「風水」のなかでも「三式」など「五術」に属するものは、「記号類型」に依拠する経験則であり、科学から否定されることはありません。
「元合派」は風水専門の流派であり「五術門派」ではありません。明澄透派は「五術六大課」を扱う門派ですから、「三元派」や「三合派」の「風水」を扱わないのは当然ですが、そこには「記号類型」による経験則である「気」という範疇に収まりきれない「理」という観念の問題も存在するのです。

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だから、「風水」は、疑似科学などと結びつきやすいというわけか。