張明澄記念館 「張明澄 風水の世界」 を読む その1

<張明澄記念館>に「張明澄 風水の世界」が追加された。
http://meichyo.org/pdf/fusui.pdf

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張明澄 風水の世界

日本員林学会代表 <東海金> 掛川掌瑛
風水の起源、また「風水」という言葉の語源については、古来より、郭璞の定義など、諸説ありますが、張明澄先生においては、『周易』の「水風井卦」を「風水」の語源とします。(『周易の真実』張明澄口述・掛川掌瑛編著1998年、2008年にファイブ・アーツ社より改訂版を出版)
「易」の知識が乏しい人は、文字の順序が逆ではないかと思うかも知れませんが、易卦は、 下から順に「初爻」「二爻」「三爻」と立卦するもので、先に「風」(内卦)があって、後に「水」(外卦)というのが本来の順序です。つまり、「風」の上に「水」が乗っているから、そのまま上から見て「水風井」と読むようになったものです。『周易』には「易卦」の記号と卦名が書いてあるだけで、「水風井」という読み方が書いてあるわけではありませんから、かつては「風水井」と読んでいた時代があったという可能性も否定はできません。「井」とは、現代と同じく井戸のことであり、空気と水が良い井戸を掘る場所、つまりは人が住むための場所を決めるための技術が「風水」だったと考えられます。また、風水の理論構成は、「巒頭」と「理気」、または方法論の別を問わず、必ず「易卦理論」が基礎にあり、風水という言葉の起源もまた『周易』にあることは何の不思議も無く、全く当然と言えます。
「気乗風則散 界水則止 古人聚之使不散 行之使有止 故謂之風水」(気は風に乗じて則わち散り、水に界されて則わち止まる。古人は之れを聚めて散らせ使めず、これを行いて止まり有ら使る。故に之を風水と謂う)という、郭璞に依るとされる風水の定義は、明らかに間違ったものです。
まず、「気は風に乗じて散る」と言いますが、それなら山の上から稜線に沿って降りてくるはずの「気」は、無風の日以外は風に吹かれて散ってしまい、平地には届かないのでしょうか。また、「水に界されて止まる」といいますが、「気」は、稜線伝いに降りる他、水に運ばれ流れて行くものであり、水に遇って止まることはありません。
このようなことは、風水師であれば誰でも知っていることであり、風水の「巒頭」に関する実践的な知識が少しでもあれば、つまり実際に風水を見ることができる人であれば、間違えようがありません。
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おそらく郭璞とされる『葬書』の作者は、風水師ではなかったでしょうし、実際の風水知識はほとんど無かったのでしょう。つまり現代の学者たちと同様、風水に関わる文献を多く読んだり、風水の周辺にいるだけで、風水師の世界には立ち入ることができなかったのでしょう。
もともと風水は、人が住むのに適した場所を探す伎術であったことは、上記の通りです。つまり、よく言われる「陽基」「陽宅」「陰宅」という分類では、「陽基」に当たるのが本来の風水でした。しかし、現代に至るまで、中国人にとって風水とは「陰宅」つまり墓相やお墓そのもののイメージが定着しています。このイメージを決定的にしたのが、郭璞の作とされる『葬書』であることは間違いありません。
風水に関する典籍には、『葬書』よりも古い『狐首經』など、もっと多くの書物があり、風水の定義も『葬書』と同じではありません。『青囊經』『錦囊經(葬書)』などは、風水の最古の部類に属する古典籍として知られていますが、『鄢囊經』『白囊經』『黄囊經』『紫囊經』などの発展形態まで 研究している学者もいないようです。これは学者の仕事としても褒められたものではありません。
昔から『葬書』の定義ばかりが、正しい風水の定義であるかのように言われ、現代の学者もそれをそのまま踏襲する人が多く、風水師と自称、あるいは他称される人々からも、疑問を呈する人が現れませんでした。どうして累代の風水師たちは、『葬書』の間違いを知っていても指摘しなかったのでしょう。しかし、風水師も商売ですから、いちいち権威に逆らうよりは、有難く権威を利用させて貰ったほうが得策だったのでしょう。

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「風水」は『周易』から出たのか。
 
 そのほうが古いし、いい感じだよね。